「テッドー」
弾んだような名呼び声に、テッドは窓の外を振り返った。勿論、それが誰かは知っていた。












 その先に立っていたのは少年。赤月帝国の六将軍の一人であるテオ=マクドールの一人息子である。
 彼がテオ将軍に『戦災孤児』として拾われてから、その息子である少年とは友と呼べる存在になっていた。



 少年を、テッドはベルと呼んでいた。
 本当はもう少し長い名前なのだが、面倒なので普段はベル、と呼んでいる。
 そのベルが、お気に入りのバンダナを今日はつけずに、春らしい出で立ちで彼を見上げていた。
「何だ、稽古なら今日は付き合わないぞ」
 窓から顔を出して、欠伸をひとつ。そんな様子に、ベルは口を尖らせてから、
「違うよ、約束しただろ、昨日」
 そう言われて、得心がいったようにああ、と彼は頷いた。
「桜、見に行くんだったな」