「テッド、まんじゅう食べない?」
 何も持たずに往来に出てから、ベルはそんなことを言い出した。
「饅頭?」
 テッドの鸚鵡返しこっくりと頷くと、ベルは道にある露店を指差した。大きな蒸し器がふたつみっつ並んで、隙間から出ている湯気が露店を白く霞めていた。
「あそこに売ってる、アレ」
「あー…でも、買い食いはイケないって、グレミオさんが言ってなかったっけ」
 ベルと遊びに出るときは、出際に大概「買い食いはしちゃだめですからね!」と言っているのを思い出した。
「へいきだよ」
「平気だよって、ベル……」
 呆れたような物言いのテッドにはおかまいなしに、ベルは満面の笑みを向けた。
「ほら。あそこのまんじゅう、おいしいんだ」