「…………………………ッハ」
 思い起こして、クルトは悪態をついた。つかずにはいられない。
 先ほどの憂さ晴らしをする為に散歩に出たのだが、どうもそういうことしか浮かんでこない。
 いつもは眺めれば懐かしい気持ちで満たされるはずの島の木々や、絡み付いてくる下草、鳥の声、虫の声全てがなんだか鬱陶しい。
「だいたい、兄貴がしっかり姉貴をコントロールしねーのが悪いんだ。情けねー奴だ」
 自分もできていないことなどすっかり忘れて、彼は一人悪態をついた。
 鬱屈とした気分で小さな森の中を歩いていると、目の端にきらりと光るものがあった。
 少し気になって立ち止まり、かがんで、よく見てみようとした。
 そこへ急に強い風が吹いた。
「おわっ」
 クルトは思わず目を閉じ、そこから目を一瞬離した。
 風がやみ、うっすらと目を開けてそこを見ると、そこにはただ森の下草が高く生い茂っていただけだった。
 溜息をついて、そのままその場に倒れこんだ。
「ああ……俺何してるんだ」
 なにかが左手の親指あたりに這い上がってきたのを感じる。右手でそれをつまんだ。
 虫。羽虫だ。
「別に一緒に住む必要なんざ無ぇじゃないか」
 虫を放す。虫は飛ばないで、そのままポトリと下草の中に落ちていった。
「そうだよな。そうすりゃ、俺は自由ってわけだな………」













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